2011年7月31日日曜日

太極拳打法

前回『イサミ』のお話の時に、太極拳の打法を『人体を水の入った皮袋に見立て、その水を揺らすことを基本原理としている』とご説明しましたが・・・

「フカシこいてんじゃねえぞ!
 そんなの漫画の中だけの話だろう?!」

って、思われる方も多いと思いますので、今日はちょっとだけその動画をご紹介したいと思います。ただし、却って不信感を煽ることにつながるかもしれませんが(笑)





いかがでしたでしょうか?

ブラウザを閉じるのをちょっとだけ我慢していただいて(笑)、もう少しだけ説明をお読みください。

この摩訶不思議な力はどこから湧いてくるかといいますと、(いずれアクション講座でもじっくりとご説明いたしますが)胴体、すなわち体幹から生み出されたものなのです。

以前、『全身を導く頭の動き』の時に胴体をクネクネさせている動画をご紹介したかと思いますが、あのクネクネ運動の、百倍細かく、百倍複雑で、百倍速い運動を行えばこのような『威力』を生みだすことができるのです(これもいずれご説明しますが、呼吸の力が深く関わっています)

このような力の使い方を、専門的には『勁(けい)』と呼び、一般的な力とは区別しています(勁を発することを『発勁(はっけい)』と呼びます)

勁は体幹から発生するため、身体のどこからでも相手に伝えることができます。今回ご紹介した動画では、相手に手首を持たせてそこから勁を伝えていますが、本来は、拳や掌を使って直接相手にぶち込むのがセオリーです。

この勁の利点は、ご覧のように、腕や脚を移動させる距離が必要ないということです(威力は体幹から発しているので) また、この運動の根本原理が、先にご説明しました『クネクネ運動』、つまり『波の動き』ですので、相手の体内の水分をよく揺らしてくれるということです。

この『波の運動』を頭に食らえば、一瞬で脳震盪を起こしてしまいます。丁度、グローブのような柔らかいもので頭を殴られた時と同じような状態になるわけです。

まさに、波紋というわけですね(笑)!!

実戦に於いてはいいこと尽くめの太極拳打法ですが
一つだけ困ったことがあります。

それは、アニメーションにはできないということです!!

この動画のような運動をモーキャプで撮影したとしても、胴体がブルブルッと震えるデータしか撮れないでしょう(笑) そんなもの、Motion Builder で Fカーブにフィルターをかけたら綺麗さっぱりなくなってしまいます(泣)!!

私の夢はですねえ・・・いつか、この発勁の運動を、正しい形でアニメーションにすることなのです。手からエフェクトを出すだけじゃなくってね・・・(もちろん それも必要ですけど)

どなたかお知恵を貸していただけないものですかねえ~(笑)

2011年7月26日火曜日

イサミ

弊社スタジオには移動式のサンドバッグが一つ置かれています。

あだ名は『イサミ』・・・



ええ、武道・格闘技関係者なら誰でも知っている、格闘技グッズの専門店です。つまり、このサンドバッグはそのお店の製品というわけなのですが、店名をそのままあだ名にするとは・・・極めて安直な話です(笑)

モーキャプの撮影では、正直、あまり出番のないイサミ。

まれに、柱に見立てて、寄りかかったり、抱きついたりする時に使用されますが、どちらにしても、本来の目的からはかなりかけ離れた使われ方をされています(笑)

でもご安心を。
運動部には重宝されていますよ~。



写真の運動部員S(キックボクシング歴三年、好きな食べ物『すあま』)も、気が向けばバシバシ蹴りまくっています。

もちろん、塾長も。

なにしろ、イサミの土台には水が入ってますからねえ(砂でもいいのですが)。

塾長が専門とする太極拳の打法は、人体を『水の入った皮袋』に見立てて(身体の約60~70%は水でできていますから)、その水を『揺らす』ことを基本原理としています(要するに『波紋』ですね/ 笑)

なので、水がいっぱい詰まったイサミは、またとない鍛錬具となるのです(笑)

仕事の合間に稽古が出来るなんて・・・
嗚呼、なんという幸せ者なのだらうか、私は!!

(↑ 思わず倒置法を使うくらい幸せってこと/ 笑)

2011年7月22日金曜日

モーキャプ大喜利

・・・すいません、本当にすいません。
万策尽きました・・・もうネタがありません。

というわけで、NHKの『 着信御礼!ケータイ大喜利 』大ファンの塾長が、勝手に『お題』を考えて勝手に『答え』を出しておきました!

疲れた頭をリフレッシュさせるのにお役立てください(笑)


【お題】

このモーキャプスタジオ、イラっとするなぁ・・・その理由とは?

【答え】

・オペレーターが「カメラ回りました!」という度にいちいち噛む

・大道具セッティングの時、全員で「よろこんで~!!」と叫ぶ

・↑ しかも声がふてくされている

・お昼のお弁当が菓子パンと牛乳だけ

・スタッフ全員がそろいのツナギを着ている(うちじゃ!!)

・↑ しかも週末は引っ越し屋さんに早代わり


【お題】

このアクターさん、イラっとするなぁ・・・その理由とは?

【答え】

・フェイシャルじゃないのにやたらと顔で演技しようとする

・気付くとショッカーの真似をしている

・気付くともじもじくんの真似をしている

・Tポーズに命を懸けている(そりゃ、わしじゃ!!)


・・・評判が良かったら、続きます・・・

2011年7月20日水曜日

アクション振り付け(素材)

本日はアクションの具体的な『手(て:振り付け)』をご紹介いたしましょう。

前回からの流れで言えば、注意していただくところは、やはりカラミ(やられ役)のポジショニングです。初級用と中級用の動画をご用意いたしましたので、その違いをじっくりとご覧になってください。





いかがでしょうか?

中級は初級に比べて『手』も複雑ですが、カラミの出入りも半端ないですね(笑)

よ~く見てみると、シン(主役)の次の攻撃に合わせて、絶妙のタイミングと距離で飛び込んでくるのが判ります。これって、簡単そうに見えますが結構難しいんですよ(笑)

アクションを習いたての人は、ほとんどの場合、飛び込み過ぎてシンにぶつかったり、自分の攻撃をシンに当ててしまったりすることもあります。相手がスターさんなら間違いなくクビですね(笑)

なので、カラミの実力とは、真っ先にこの『間合い取り』の上手さが挙げられるわけです。

こんな風にアクションを眺めてみると、その『手』を付けた殺陣師の意図や演出をより深く理解することができます。それによって得られた感性が、皆さんのアニメーション作成の一助となれば幸いです。

2011年7月18日月曜日

公演のお知らせ

「最近アクター塾の稽古報告が更新されてないんだけど、ちゃんと稽古やってんの?」って思われてる方・・・

すいません、図星です(汗)

実は、私、演劇集団キャラメルボックスの夏公演

降りそそぐ百万粒の雨さえも

の殺陣指導に追われていて
七月のアクター塾の稽古は休みにさせてもらっているのです。

新撰組が舞台のとっても熱い物語ですので
興味をお持ちの方は是非ご覧になってみてください!!





※画像をクリックすると特設ページに移動できます。

2011年7月10日日曜日

全身を導く頭の動き

今回は、運動において『頭部の動き』がどのように作用しているのかをご説明いたしましょう。

以前、腰の話の時に『運動は腰(骨盤)が司っている』と書きましたが、実は、あれでは片手落ちだったのです。『腰と頭の動きが相まって、初めて理想的な運動が体現される』・・・これが正しい説明です。

それでは、実際に動画をご覧いただきましょう。



いかがでしたでしょうか?

最初に出てきた『水平回転に見る頭の動き』は、武道・格闘技に限らず、ダンス・舞踊等の身体運動に於いても極一般的に見られるものです。

その要点は、『身体を捻る際に進行方向を先に見る』というものです。進行方向(武道では標的)を先に見るということは、頭部が最初に回転するということです。まだ骨盤の回転が追いついていないその状態では、背骨に強力な『ねじれ』が生じています。



それを開放することによって(ダンス用語で「リリース」といいます)、ダンスでは切れのあるターンを、武道・格闘技では鋭い突き・蹴りを体現することが可能になるのです。

動画の中の『中国武術の裏拳(掌)』では、身体こそ回転していませんが、先導する頭の回転によって背骨に『ねじれの力』が生み出されているのが判ります。掌が標的に当たった瞬間、頭を振り戻しているのには理由があって(昔のカンフー映画ではよく見られた動きです/笑)、そのまま標的の方に頭を向けていると、ねじれの力が脳にまで達し、脳震盪を引き起こしてしまうのです。そうです、一人パンチドランカーになってしまうのです(笑) また、脳震盪の回避だけではなく、この動作によってねじれの力を全て腕に導くという目的も併せ持っています。


次の『縦方向の頭の動き』は、皆さんにとっては少々馴染の薄いものかもしれませんが、中国武術等、伝統的な武芸にはなくてはならない身体の使い方です。

前回にも書いた事ですが、頭部の重さは成人で体重比の約10%もあります。その重い頭を縦方向に移動させるということは、その『重さ』を利用することに繋がるのです。『重さを使う』と言われてもにわかにはイメージしづらいとは思いますが、一流の運動家ともなれば、ジャンルは違えども必ずこの物理法則を使いこなしているものなのです。

例えば、ボーリングボールを胸に抱えている状態で(この状態では腕と背中の筋力でボールの位置は保持されています)急に腕の力を抜いたとします。当然ボールは落下を始めるわけですが、それでも尚ボールから手を離さずにいると、今度は上体が引っ張られて前につんのめろうとします。この場合、つんのめる不安定な格好悪さを度外視すれば、上体は、かなりのスピードで斜め下に移動したことになりますよね。

これが、重さ利用した運動の基本原理となります。そうして、ボーリングボールに当たる部位が頭だというわけなのです(形も似てますしね/ 笑)

実際には、頭の移動値(距離)は微々たるものですが、それでも、ボーリングボールが数センチ落下する場合の運動エネルギーを思えば、馬鹿にできない力を頭(の移動)から発揮できるものなのです。

動画の『形意拳(劈拳:へきけん)』の説明では『あごを少し上げることで、背中から腕へと勁(ちから)を導く』とありましたが、実際は(よく観察してみると)、鳥が餌をついばむ時に似た細かい『縦回転』の動きをしているのが判ります。それによって(当然頭の重さも使いつつ)、背骨の縦方向への『うねり』を誘発し、その運動エネルギーを掌に伝えているのです。

また、この『縦方向の頭の動き』は古典的な武芸にだけ見られるわけではありません。例えば、野球のピッチングや、打撃系格闘技の『サモアンフック/ ブーメランフック』等にも見られる事象です(これらの運動では、水平方向へのねじれも加わっていますが)

このように、頭の使い方は運動の根幹に関わる事象です。ということは、アニメーションの作成においても同じことが言えるわけですね(笑)

頭の動きを十分に理解され、皆さんが素晴らしいアニメーションをお作りになることを願って止みません!!

2011年7月8日金曜日

頭と腰の関係

今回は頭のお話をしましょう。

運動に於いて『頭(部)の使い方』は腰と同じくらいに重要です。何しろ体重比の約10%の重さを持つ部位ですから、そのポジショニングが悪ければ身体のバランスが崩れるのは当然の事といえましょう。丁度、首の据わっていない幼児のヨチヨチ歩きを思い出していただければ納得されると思います(あれはあれで、実は驚異的なバランス能力を発揮しているのですが・・・)

そう、頭は常に腰とバランスを取りながら、我々の運動を成立させているのです。それは専門的なものに限らず、私達が日常何気なく行っている動作にも観察することができます。

下の写真では椅子から立ち上がる動作を紹介していますが、各場面で、頭と腰が丁度天秤のような釣り合いを見せているのが判るかと思います。









武道のパフォーマンスで『立ち上がろうとする際に額を軽く押さえられるだけで動けなくなる』というものがありますが(※)これは頭のポジショニングの重要性を雄弁に物語っている事象です(動画参照)

(※)あくまで真っ直ぐに立とうとした場合です。
 胴体をうなぎの様によじれば難なく立つことができます(笑)



動画の中で、『頭と腰がバランスを取ることができるのは、一本の背骨でつながっているから』と説明しましたが、(当たり前の事ですが)実は、ここに動きの本質が隠されているのです。

運動の種目に関わらず、洗練された動きというものは、須らく背骨から生まれたものでなくてはなりません(太極拳の口伝には『拳は背骨で打つ』というものがあります!) それは、激しく踊るブレイクダンスにも、静かで優雅な日本舞踊にも等しく言えることです。ただ、その動きを外に出すか出さないかの違いだけなのです。

そうして、ここからが一番重要な事なのですが、背骨の重要性を認識している種目・流派(もしくは個人)には、必ずといってよい程、腰の他に頭のポジショニングに関する教えが存在するものなのです。

何故なら、繰り返しになりますが、頭と腰は一本の背骨でつながっている故に、頭と腰の使い方によって背骨の潜在力を最大限に引き出すことが出来るからです。

これからは、運動を観察される場合も、ご自分の日常の動作を観察される場合も『頭のポジショニング』を意識的にご覧になってはいかがでしょうか?身体運動の極意が垣間見えるかもしれませんので。

次回は、運動における頭部の使い方を、具体例を交えてご説明したします。どうぞお楽しみに!!

2011年7月6日水曜日

ガンガンガンガン!!!!

若い命が真っ赤に燃え~てぇ~~!!(by 佐々木いさお)

・・・というわけで、今日は Gun のお話(笑)

アクションものには欠かせない銃ですが、モーションキャプチャーの撮影も例外ではありません。弊社スタジオでは、用途によって様々なタイプの銃(小道具)をご用意しております。

先ずはリアルなモデルガンから。



どうです~格好いいでしょう?重さといい質感といい、役者さん達がその気になること請け合いです(実はこれ、モーキャプディレクター・初海氏の私物です/ 笑)

ただ、モデルガンでのアクションは非常に危険ですので、銃を持ったまま転がったり、吹っ飛んだり、また、力の弱い女性が持つ時などは下のような手作りの軽い銃を持ちます。



手作りでも、なかなかいい出来でしょ?イブキの小道具班はやる気満々ですからねえ~、ご依頼があれば何でも作っちゃいますよ!!

バズーカ砲だってちょちょいのちょいです(笑)!!