2011年7月10日日曜日

全身を導く頭の動き

今回は、運動において『頭部の動き』がどのように作用しているのかをご説明いたしましょう。

以前、腰の話の時に『運動は腰(骨盤)が司っている』と書きましたが、実は、あれでは片手落ちだったのです。『腰と頭の動きが相まって、初めて理想的な運動が体現される』・・・これが正しい説明です。

それでは、実際に動画をご覧いただきましょう。



いかがでしたでしょうか?

最初に出てきた『水平回転に見る頭の動き』は、武道・格闘技に限らず、ダンス・舞踊等の身体運動に於いても極一般的に見られるものです。

その要点は、『身体を捻る際に進行方向を先に見る』というものです。進行方向(武道では標的)を先に見るということは、頭部が最初に回転するということです。まだ骨盤の回転が追いついていないその状態では、背骨に強力な『ねじれ』が生じています。



それを開放することによって(ダンス用語で「リリース」といいます)、ダンスでは切れのあるターンを、武道・格闘技では鋭い突き・蹴りを体現することが可能になるのです。

動画の中の『中国武術の裏拳(掌)』では、身体こそ回転していませんが、先導する頭の回転によって背骨に『ねじれの力』が生み出されているのが判ります。掌が標的に当たった瞬間、頭を振り戻しているのには理由があって(昔のカンフー映画ではよく見られた動きです/笑)、そのまま標的の方に頭を向けていると、ねじれの力が脳にまで達し、脳震盪を引き起こしてしまうのです。そうです、一人パンチドランカーになってしまうのです(笑) また、脳震盪の回避だけではなく、この動作によってねじれの力を全て腕に導くという目的も併せ持っています。


次の『縦方向の頭の動き』は、皆さんにとっては少々馴染の薄いものかもしれませんが、中国武術等、伝統的な武芸にはなくてはならない身体の使い方です。

前回にも書いた事ですが、頭部の重さは成人で体重比の約10%もあります。その重い頭を縦方向に移動させるということは、その『重さ』を利用することに繋がるのです。『重さを使う』と言われてもにわかにはイメージしづらいとは思いますが、一流の運動家ともなれば、ジャンルは違えども必ずこの物理法則を使いこなしているものなのです。

例えば、ボーリングボールを胸に抱えている状態で(この状態では腕と背中の筋力でボールの位置は保持されています)急に腕の力を抜いたとします。当然ボールは落下を始めるわけですが、それでも尚ボールから手を離さずにいると、今度は上体が引っ張られて前につんのめろうとします。この場合、つんのめる不安定な格好悪さを度外視すれば、上体は、かなりのスピードで斜め下に移動したことになりますよね。

これが、重さ利用した運動の基本原理となります。そうして、ボーリングボールに当たる部位が頭だというわけなのです(形も似てますしね/ 笑)

実際には、頭の移動値(距離)は微々たるものですが、それでも、ボーリングボールが数センチ落下する場合の運動エネルギーを思えば、馬鹿にできない力を頭(の移動)から発揮できるものなのです。

動画の『形意拳(劈拳:へきけん)』の説明では『あごを少し上げることで、背中から腕へと勁(ちから)を導く』とありましたが、実際は(よく観察してみると)、鳥が餌をついばむ時に似た細かい『縦回転』の動きをしているのが判ります。それによって(当然頭の重さも使いつつ)、背骨の縦方向への『うねり』を誘発し、その運動エネルギーを掌に伝えているのです。

また、この『縦方向の頭の動き』は古典的な武芸にだけ見られるわけではありません。例えば、野球のピッチングや、打撃系格闘技の『サモアンフック/ ブーメランフック』等にも見られる事象です(これらの運動では、水平方向へのねじれも加わっていますが)

このように、頭の使い方は運動の根幹に関わる事象です。ということは、アニメーションの作成においても同じことが言えるわけですね(笑)

頭の動きを十分に理解され、皆さんが素晴らしいアニメーションをお作りになることを願って止みません!!

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