2011年9月29日木曜日

パンチの重心

今回はパンチの重心に関するお話をしましょう。

と申しましても、重心は種目や流派においても千差万別、とても一度にご紹介できるものではありません。なので、ここではあくまで「こういう傾向があります」という概略に留めさせていただきたいと思います。



武道・格闘技好きの方達にとってはあまりに基本的な事象ではありますが、専門学校の学生さんや、プロのアニメーターさんでも女性の方で、あまりこういった事にお詳しくない方達にとりましては 少しはお役に立てることかと思います。

後、動画の補足ですが、『現代格闘技と伝統拳の前後の重心』に関してあれこれ説明していますが、実戦(生の動き)では、ほぼ半分のシチュエーションにおいて、身体の移動(ステップイン)を伴うということを覚えておいてください。この辺さえ押さえておけば、パンチの重心移動に関する表現は問題ないかと思われます。

<< 補足の補足 >>
伝統拳の型等では、どっしりと腰を落としてその場で行うものが多いですが、これは実は、『脚から生まれた力を上体に伝える』ことを学ぶための方便であり(初心者がいきなり高速移動をしては、その原理を見失ってしまいますので)また、高速のステップインを可能にするための足腰の鍛錬の意味も含まれています。

2011年9月25日日曜日

一軸と二軸

以前、軸のお話をさせていただいた際に、『背骨に沿った軸(中心軸,センター)の他にも軸は存在する』と説明いたしましたが、今回は『左右の股関節を上下に貫く軸』のお話をしたいと思います。

ここでは便宜上、通常の中心軸を『一軸(果物ではありません/ 笑)』、股関節を通る軸を『二軸』というように呼ばせていただきたいと思います。





さて、二軸を使う利点ですが、この軸を用いることによって『背骨を捻じらずに上体の向きを変えることができる』ということです。それによって、背骨が『捻じる動作』から解放され、その分、『上下に伸びる動作(『立つ腰』参照)』また、『左右の揺れを伴う運動(『肋骨と肩甲骨』参照)』などにその力を使うことが出来るのです。

それによって、同じ方向に力を注ぐにしても、単に一軸で上体を捻じった時よりも、より複雑な運動(効果)を目標に作用させることができるのです。

言葉で説明されてもイメージが湧き難いでしょうから
早速、動画でご確認いただきましょう。



一見して、二軸の時の方が上体の動きは少ないように見えますね。落ち着いた感じがします。故に『頑張ってる感』も少ないかと思われます(笑)

ですが、これまでご説明してきましたように、外には現れないだけで、身体の内側では背骨の『うねり』やら『伸長(上下への伸び)』やら、後、最も大切なことは『股関節の捻じれのパワー』が生み出されているということなのです。

股関節の筋肉というものは、非常に質量があり、かつ強靭なものです。それらが生み出す捻じれのパワーを上体に伝えることができれば、どれ程の威力が生じるかは想像に難くないはずです(前回の『パンチは脚で打つ!!』の状態ですね)

このように、全ての運動において(格闘動作,舞踊動作・・・)二軸はその威力(表現力)の核となるべき存在となっているのです。

ただし、一軸のみ、二軸のみという運動はさほど多くはありません。大抵の運動においては、一軸と二軸が複雑に絡み合い、協同しているものなのですから(野球のピッチング動作などはその好例だと思います)

傾向としましては、足幅が狭く、かつ内股の構えでは一軸になる場合が多く、逆に足幅が広く、かつ外股の場合は二軸になる場合が多いようです(いずれも例外があります)

これから皆さんが運動をご覧になる際には、この『一軸と二軸』にご注目されることをお勧めします。それによって、皆さんの運動へのご理解が格段に深まることと思いますので。

2011年9月23日金曜日

パンチは脚で打つ !!

さてさて、パンチの威力というものは軸の回転からだけでは不十分です。脚(足)で床を蹴り、そこから生じる反発力(抗力)を使ってこそ本物の威力とキレが出せるものなのです。

それでは、早速動画をご覧いただきましょう!



補足説明ですが、動画の中で『ワンツーパンチの<ワン>は前脚の蹴る力を用いる』と説明していますが、実際は(パンチは殆どの場合動きながら打つわけですから)、前方に踏み込んだ(ステップインした)際に踏ん張る力を使います。

(これら両脚の踏み込みと上体との関係は、野球のピッチング動作等でも観察することができます)

また、伝統拳(伝統武術)では『脚が生み出す力を重視している』と説明してありますが、特に中国武術においては、古来様々な歩法(ステップ)が研究されてきました。中には、運動の素人さんから見ると滑稽に映るものもありますが、実はそれらは、強力な威力を生みだすため、開祖たちが命懸けで編み出したものだったのです。

というわけで、パンチのアニメーションを作成される際には、是非とも脚の細部にまで心を配っていただければと思います。

2011年9月20日火曜日

パンチは軸で打つ!!

アクション講座を始めてから何ヶ月が経ったでしょうか?
ようやく・・・ようやくパンチの基本の解説です(笑)

さてさて、現代格闘技 及びアクションにおけるパンチの基本は、腰の水平回転を上体につなげることです。この運動構造は近代西洋スポーツに多く見られるもので、例を挙げれば、野球のバッティング、テニスのスイング等々・・枚挙にいとまがありません。

それ故、すっかり西洋化してしまった我々日本人において、最も馴染みの深い動きだと思われます。ということは、アニメーションにも必須だということですね(笑)

さて、腰の水平回転を上体につなげるために最も重要なものは『軸』です。軸がふらついていては腰から生まれた回転力があらぬ方向に逃げてしまうからです。

というわけで、『パンチの基本で一番重要なものは軸』ということになるわけです。

軸に関するご説明 は一番最初にさせてもらいましたので、そちらをご参照いただければと思います。また、動画の方も、軸の時のものと内容が重複しますので、あっさりめに編集しております。

決して手抜きをしてるわけじゃありませんよ!
何事も順番が大事だからです!

じゅ・ん・ば・ん(by サツキ)!!

2011年9月18日日曜日

『武術の原理』

そうそう、忘れてました。玄舟塾(殺陣の教室)時代に私が管理していたHP『 武術の原理 』をご紹介するのを。



これは、以前ご紹介した『Web殺陣教室』と並行して作成されたものですが、『Web殺陣教室』が殺陣の技の具体的な解説に終始していたのに対し、より本質的な身体の使い方に言及したものです。

なので、最近の体幹の話題のような、深い話がお好きな方には是非ご覧になっていただきたいと思います。

ま、あいかわらず
アニメーションには全く役立たない話ばかりですけど(笑)!!

2011年9月11日日曜日

体幹から生まれるキレ

長らく続いた体幹のお話、今日が一応の最終回です。

よく「あのアクターさんの動きにはキレがある」という言い方をしますが、その『キレ』がどこから生まれるのかご存知でしょうか? 運動家によって意見は様々でしょうが、塾長は、やはり体幹から生じると考えています。

塾長の考えるキレの定義とは

体幹中の諸々の筋肉がマシュマロのように柔らかく、且つ、鋼のように硬く使えること。つまり、弛緩と緊張の幅が広いこと。

骨盤・肩甲骨・肋骨等がバラバラに、かつ一本の棒のようにまとまっても使えること。要するに、分立と統合の幅が広いこと。

尚且つ、なるべく短時間でこれら両極の局面に移行できる=動作が素早いということ・・・です。

例えば、子供は身体が柔らかいですが、それ故にキレのある動きは難しく、また、老人は身体が硬い故にキレのある動きとは無縁です(キレがあったら怖いです/笑)

スポーツや武道では、身体の硬い人の方がバネがあり、キレのある動きが得意とされていますが、そういった人達が苦労をして柔らかさを身に付けた暁には、前にも増してキレが出せるようになるものなのです。



というわけで、何をするにも体幹が大事だということはガッテンいただけたでしょうか?

次回からは、ようやく具体的なパンチ・キックの解説に入りたいと思っています。

おそらくは、一般的な格闘動作の解説になるとは思いますが(クネクネとかしない)、それらレギュラーな動きの中にも、今までご紹介してきた様々な『原理』が息づいていることを知っておいていただければ、そのご理解もより深いものになることと確信しています。

それでは、次回からのアクション講座をどうぞお楽しみに!!

2011年9月7日水曜日

システマ

体幹の話が続いている中で、とても興味深い武術を見つけました(活劇座の古賀さんが教えてくれました!)

それは『システマ』といって、ロシアの軍隊で採用されている格闘術のことなのですが、その基本原理と戦闘方法が非常にユニークで、脱力と『体幹からの連動システム』をその基本原理としていることと、超接近戦のカウンター攻撃を得意としていることから、私はこれを初めて見たとき太極拳かと思ったくらいです(笑)

つまり、両者はそれほど似ているということなのですね。
それでは、早速、その戦い方を見ていただきましょう。



いかがでしょう?私がこれまでお見せしてきたような「怪しげな臭いが」プンプンしますねえ(笑)

至近距離からの、しかも軽く出しただけのパンチで大男が悶絶する・・・軽く撫でているだけなのに、大男達がこれまた面白いようにひっくり返される・・・(笑)

信じられないかもしれませんが・・フカシこいてると思われるかもしれませんが(笑)、これが現実です。脱力と体幹からの連動システムが実戦で通用するという証なのです。何故なら、役に立たないものを、命を懸けるに値しないものを一国の軍隊が採用するはずがないのですから。

というわけで、お次はそのトレーニング方法です。
私はこれを初めて見た時、ニヤニヤしっぱなしでした(笑)



どうです?
これでもか!というくらいにクネクネしてますねえ~!!

私、めちゃくちゃ親近感湧くんですけどぉ(爆)!!

さてさて、武道家としての私は、この脱力と体幹主導の動きを極めていければそれで良いとさえ思っているのですが、殺陣師・アニメーターとしてはそうも言っていられません。

何故なら、太極拳の時にもお話しましたが、脱力系の動きでは迫力が出せないからです。いや、脱力系の人間にとってはそれで十分面白いのですが、普通の人達が見たら「なんじゃこれ?」って思われるのは間違いないですからねえ(笑)

何かこう、こういった脱力系の動きをカッコ良く見せる方法はないものですかねえ・・・

どなたかお知恵を貸してくださらないものかしらん?

2011年9月2日金曜日

無刀取り(素材)

今日は無刀取り(むとうどり)のお話をしましょう。

無刀取りとは読んで字のごとく、相手は刀を持っている状態、尚且つ自分は素手のままで相手の刀を奪う(もしくは、奪わないまでも制圧する)ことを指します。

映画やアニメでは、直接相手の刃を手で掴む場面が多く描かれていますが(真剣白刃取りですね)、マニアックな技が大好きな塾長といえども、これらはフィクションではないかと思っています。まあ、武道の演武ではしばしば見受けられることですが、試合形式で自由に攻撃しあう中でこれをやった人を未だかつて見たことがないからです(笑)

塾長の知っている無刀取りの要点は、相手の『手首』を取りにいくというものです。手首であれば自分の手が切られる心配はありませんものね(笑)

ただし、実戦でこれを使うとなると、かなりの度胸と踏み込みの速さが必要となります。踏み込みが甘ければ、たとえ相手の手首に触れたとしても、降ってきた刀に頭を割られてしまいますからね(笑)

というわけで、無刀取りを題材にした『手(て:振り付け)』を二つご紹介しましょう。皆さんのアイデアの参考になれば幸いです。




下にご紹介するのは山本周五郎の短編小説『雨あがる』を舞台にしたときの映像です(もちろん映画も有名ですね)。喧嘩の仲裁に入った主人公が、あっという間に四本の刀を奪い取るという場面です(笑)