2011年5月22日日曜日

腰の構え_日常への応用

さあ、長かったこのシリーズもクライマックスに近づいてまいりました。早速、『腰の三態』の養成法からご紹介しましょう。



この方法を実践される前に十分気をつけていただきたいのは、急に無理をして腰を壊さないでいただきたいということです。運動をしていない一般の方達の腰は、丸まるか反るかのどちらか一方で固まっているのが普通です。そのままの状態で、自分の腰の在り方とは逆の方向に力をかけると、間違いなく腰椎を痛めてしまいます。ですから、以前ご紹介した『骨盤体操』を常日頃行って、腰周りを十分ほぐしてから取り組んでいただきたいのです。(ここではご紹介していませんが、基本的なストレッチを行うのもとても良いことだと思います)

また、この方法を実践されている際に痛みや違和感を覚えたら、それ以上は決して無理をされないよう気を付けてください。腰(骨盤の中)を柔らかくするのは一朝一夕でできることではありません。私も、二十年以上も鍛錬を続けてようやくある程度まで動かせるようになった次第ですので。


さて、『腰の三態』が身に着いたら日常の生活に応用していきましょう。

次の動画では、『椅子の座り方』と『重い物の持ち方』をご紹介しておきました。『椅子の座り方』では、一歩踏み込んで、『デスクワークの中で腰の三態を練る方法』も解説しておきました。『骨盤体操』と併せて実践していただければ、いつまでも健康で溌剌とした身体を維持することができるはずです。また、『重い物の持ち方』では、映画『魔女の宅急便』の一場面で、キキのお父さんがキキを持ち上げようとして上がらず、腰の構えを正してからやり直すという動作を再現してみました。腰の構えがアニメーションの中で見事に描かれている好例ですので、是非参考になさってください。



次回はオマケとして、『腰の三態』が実際の運動(主に格闘技系)にどのように関わっているかをご紹介したいと思います。どうかお見逃しのないように!

チェキラ!!

腰の構え_丸まる腰

『腰の三態』の最後は『丸まる腰』です。

CGキャラのポージングでは『脱力系のキャラ』に多く見受けられる腰の構えです(JoJo 立ち?/ 笑)。 が、その運動における利点はあまり知られていないようです。

この腰構えの利点は『腕のリーチが長く使える』ということです。骨盤を丸めると、当然のことながら、それと連なる背骨も丸まろうとします。そうすると胸と腹が後ろに引かれ、いわゆる猫背のような状態になります。それは背中の筋肉をストレッチさせることに繋がり、その伸長力が前に差し出した腕をほんの僅かですが押しだす作用を生みだすのです。



ご覧のように、中国武術特有の『素早い腕の回転力』はこの腰構えから生み出されます(流派にもよりますが)。余談ですが、この時の腕を動かす動力は、腕そのものの筋力ではなく、後背筋などの背中の筋力が主ですので、演じている者の主観としましては『腕の力を抜けば抜くほど(余分な緊張をなくせばなくすほど)腕の回転力が上がる』と感じるものです。

また、一部の日本古流剣術にもこの腰構えが見受けられるようです。要するに、腕が長く使え(回転力も使え)、しかも急所である胸や腹部が敵から遠くにあるということが利点なのでしょう。

ただし、日常生活において注意していただきたいことは、この『丸まる腰』で重いものを持ったりしてはいけないということです。

『丸まる腰』は素早く強力な突きを生みだしはしますが、垂直方向からの荷重にはとても弱いものです。西洋式のウエイト・トレーニングにおいても『バナナ・バック』といって、やってはいけない腰の構えとされています。

デスクワーク中心の現代人は、自ずとこの『丸まる腰』になってしまいがちですが、先にも述べましたように、運動や日常の動作にはそれに適した腰の構えがありますので、いつも腰を柔らかくするよう心がけ(努力をし)、その動作に相応しい腰構えはどれかということを常に意識しながら日常を送ることをお勧めします。

次回は、『腰の三態の養成法』と『日常生活への応用の仕方』をお伝えしたいと思います。

腰の構え_立つ腰

さあ、『腰の三態』の二番手は『立つ腰』です。

この腰の構えは、おそらくダンス等の芸術種目では最も一般的に見られるもので、八頭身のCGキャラクターのほとんどはこの腰を基本ポーズとしているはずです。



それもそのはず、この腰の構えを取る時には背骨がより直線に近づくからです。つまり姿勢が良くなるということですね(笑)

背骨というものは緩やかなS字カーブを描いていることは常識ですが、胸と骨盤の位置をそのままにして仙骨を垂直に立てようとすると、そのカーブは直線に近づこうとするものなのです。MotionBuilder をお使いの方はご承知のことと思いますが、胸と腰(Hip)のリグに PinningT を、頭のリグに PinningR を設定して腰のリグのローテーションをローカル上のz軸で動かすと(胸と腰の位置を動かさず、腰だけを垂直方向に、前後に回転させると)、ある角度で背骨が真っ直ぐに(近く)なることが確認できます。

この事象は生身の身体の中でも起こっていることで、一流のダンサーは、基本の構えを取る時に『頭が天から吊られる』という感覚を覚えるものですが、これは背骨が上方に向かって伸びようとする(真っ直ぐになろうとする)ことから生じたものだったのです。

以前『軸の話』の時にもご説明しましたが、『意識で作った軸』は『実体の背骨』と緊密な連携を取り合っているものです。意識の軸が強くなればなるほど実体の背骨は直線に近づこうとし、実体の背骨が真っ直ぐになればなるほど意識の軸が強化されるという関係が存在します。

なので、この『立つ腰』は『強靭な軸を要する運動(ダンスのターンなどが代表例です)』には必要不可欠な腰構えといえるでしょう。また、少し深い話になりますが、『相手に触れた状態で拳を打つ』中国武術の『寸勁(すんけい)』と呼ばれる技法などは、(流派によって細部は異なりますが)この『背骨が真っ直ぐになろうとする力』を拳に伝えるのが基本原理です。

故に、訓練された武道家やダンサーはみな美しい姿勢をしているものなのです。

しかし、これを一部の身体表現者に独占させておくのもったいないことです。腰のポジションさえ意識できるようになれば、誰だって美しい立ち姿を手に入れることができるのですから・・・

みなさんも、デスクワークで丸まりがちな骨盤をしっかりと立てて、颯爽と街を闊歩してみてくだい!モテ期がくること間違いなしですからっっ(笑)!!

腰の構え_反る腰

『腰の三態』のトップバッターは『反る腰』です。

意外と知られていませんが、この腰は日本の伝統芸能・武道とは切っても切れない縁を持っています。つまり、ほとんどの芸能と武道においては、基本とされている腰の構えなのです。理由は明白です。『畳に直に座る生活様式』がそうさせてきたのです。

ところが寂しいことに、現代になって椅子中心の生活様式が定着してからは、日本人なのにこの『反る腰』が出来る人がほとんどいなくなってしまいました。一番悔しいのは、現在の大相撲において、正しくこの腰の構えを取れるのがモンゴル出身の白鵬だけになってしまったという事実です。『反る腰』こそが相撲の基本であるはずなのに、日本人力士が一人もこの腰を体現できないというのは本当に情けないことです。

このように、日本の身体文化はもはや風前の灯火です・・・どうか皆さんのお力で!CGの力で!!もう一度強い日本を復活させていただきたいのですっっっ!!んがぁ~~!!!

あ、すいません。つい熱く語ってしまいました(笑)

それでは、気を取り直して動画をご覧いただきましょう。



いかがでしたでしょうか?

動画の中で、私が『相手の押しを受けながら優雅に(?)読書をしている』場面が出てきましたが、あれは決してやらせではありません(イヤ、ホント)。

この腰の構えは骨盤の中の深層筋(インナーマッスル)を発動させる一種のスイッチみたいなものなのです。骨盤内の深層筋はとても強靭なものです。人一人の押しなどは、それのみで平気で受けられるほどです。そうすると上半身の筋肉には余裕が生まれてきます。武道や格闘技においては、腰で相手の圧力を受けつつ上半身で自在な反撃をする・・・といった理想の在り方が可能になるのです。

またこの腰は、特に前方に強い圧力をかけることを得意としていますので、レスリングや陸上の短距離走、各種格闘技の強い選手の殆どがこの『反る腰』をしているといえるでしょう。

というわけで、日本の伝統性ばかりを強調してきましたが、実は洋の東西を問わずアスリートに用いられている腰の構えだったのです。

しかし、残念なことに、CGのキャラクターでこの『反る腰』をしているのは、大抵が巨漢のゴリラみたいなキャラばかりです(笑)イケメンの八頭身キャラがこの腰の構えをしてくれたなら、子供達への日本文化の継承にとても貢献できると思うのですが・・・

それが無理なら、それが無理なら・・・せめて相撲モーションだけは『反る腰』でお願いしますうぅぅぅ~~(笑)!!

注)
動画の中でお見せした『相手の押しを反る腰で受ける』というパフォーマンスを真似されるのはもう少々お待ちください。硬いままの腰でこの運動をした場合、腰椎を激しく傷める虞がありますので・・・。このシリーズの後半で『腰の三態の養成法』をご紹介しますので、それまでは『骨盤体操』で骨盤周辺を十分に柔らかくしておいてください。

腰の構え_腰の三態

『アクション講座』

さあ、今回から数回に分けて『腰の構え』についてお話をしましょう。

『骨盤の話』の時にもご説明しましたように、『骨盤のポジショニング=腰の構え』は運動において最も重要な要因の一つです。運動には(日常の動作においても)その種目(動作)に合った腰の構えというものが必ずあります。間違った腰の構えのままでいくら練習を重ねたところで、上達出来ないどころか身体を壊してしまうことさえあるくらいです。

キャラクターのポージングをする時も同じ事がいえると思います。腰の構えがおかしければ、いくら手足の角度をいじってみたところで、なかなか格好良いポーズにはなってくれません。

というわけで、私はこの『腰の構え』こそが『アクション講座』のクライマックスであると捉えています。これを正しく伝えることができたら、「このブログにおける私の仕事は終わった」とまで考えています。余生は、ありものの動画をペペ~っと貼って、適当な説明をへへ~っとしてハイ出来あがり!みたいな、そんな夢のような日々が待っているはずです(笑)

それでは全力を注いで解説をして参りますので、皆さんもどうか最後までお付き合いくださいますように!!

さて、最初に知っておいていただきたいことは『腰の構え』の種類です。ここでは大きく分けて三つの構えをご紹介したいと思います。

『仙骨から反る腰』・『仙骨が立つ腰』・『仙骨から丸まる腰』の三つです。

ここでいちいち『仙骨から・が~』としているのには訳があります。それは骨盤を動かす時に、漠然と動かすか、明確に仙骨を意識してそこを支点として動かすかによって、動きの結果が大きく変わってくるからです。丁度、球形のオブジェクトを操作する時に、マニピュレーターを中心に置くか外周上に置くかで、その結果に明確な違いが出てくるのと同じといえましょう。

ですが、毎回毎回『仙骨から・が~』と打ち込むのは指が疲れてしょうがありませんので(笑)今後は『仙骨から・が~』を省略して、単純に『反る腰』・『立つ腰』・『丸まる腰』と表記させていただきますので、ご了承のほどよろしくお願いいたします。

説明が長くなりましたが、それでは早速『腰の三態』を動画で確認していただきましょう。動画の中には、それぞれの腰におけるポージングの例も入れておきましたので、それぞれの腰が醸し出す雰囲気の違いにもご注目ください。また、皆さんが日常的に使う『へっぴり腰』とか『腰ぬけ』という状態と区別していただくために『悪い例』も載せておきましたので、そちらの方も併せてご確認いただきますように。



いかがでしたでしょうか?『立つ腰』がちょっと判り辛かったでしょうかね?私はちゃんと仙骨を立てているのですが、大臀筋が邪魔をしてよく見えませんでしたね(笑)

『悪い例』は何処が悪かったかお判りでしょうか?そうです、悪い例では(腰椎から反ったり丸まったりしているため)骨盤が前後に大きく移動していますね。本来、『頭~胸~腰』は同じ軸上にあるのが理想です(もちろん例外はあります)。その状態こそが一番背骨の力を発揮し易いからです。

ダンス等では、わざと骨盤のポジションを『悪い例』の場所に置いたりしますが、それはあくまで表現手法の一つであって、日常的に『悪い例』のポジションを取り続けたり、重い物を持つ時に『悪い例』のポジションで持ったりするとてき面に腰を壊してしまいますのでご注意ください。

それでは、次回からは各構えについて個別にご説明していくことにいたしましょう。

2011年5月21日土曜日

殺陣の動線(素材集)

『モーション素材集』

今日は殺陣における最も基本的な動線をご紹介します。

動線(どうせん)というのは舞台の用語で、呼んで字のごとく、役者達が移動する道筋の事を指します。舞台では、映像のカメラのように、観客の視点を自在に動かすことなどできませんから、役者の動線によって状況を説明したり、迫力を演出したりする必要があるのです。

最初にご紹介するのは、対峙する二人が同じ距離を保ちながら円を描くというものです。この動線によって「隙あらば踏みこむぞ!」的な緊迫感を演出することができます。映像やCGなら、役者は動かさずに、カメラをグルングルン動かすところでしょうけれど(笑)



次にご紹介するのは、シン(※)を取り囲んだカラミ(※)が互いに交差するように移動する、業界では『シャッター』と呼ばれる動線です。

(※)
シン(芯:殺陣の用語で主役のこと)
カラミ(絡み:同じくやられ役のこと)



これだけをご覧になってもピンとこないでしょうが、舞台上でバラバラとシンを取り囲んだカラミの幾人かが、ふっとこのシャッターを切ることによって、間が崩れ、場に変化が起こり、これから起こるであろう大乱闘への期待が煽られるというわけです。

ちなみに、私がモーキャプに関わってからというもの、収録の現場でシャッターをやったり見たりした経験は一つもありません。CGでは、何十人(時には何百人)もの雑魚兵が一度に躍りかかるのが普通ですからねえ・・・無理もありません(笑)。

しかし、このような緩急の付け方を学ぶことは、CGアーティストにとっても決して無駄ではないと思うのです。

お時間がありましたら、是非、舞台に足を運んでみてください!

2011年5月19日木曜日

岡本良史さん

突然始まった新企画(思いつき)、塾長お勧めのアクターさんをご紹介する『アクターさんいらっしゃい!』のコーナーです。

記念すべき第一回は 岡本良史さん



なんと、岡本さんは塾長のJAC時代の先輩だったんですねえ。ホント、世の中狭いです(笑)

岡本さんは、アクションはもちろんですがダンスがメッチャ上手いです。ジャズダンスからバレエ、タップダンスまでを本格的に修行されているから当然です。なので、軸が完璧に出来ています。その軸から繰り出される華麗な蹴り技は必見です!

また武器もお上手で、特にヌンチャクは業界でも屈指の使い手ではないかと思われます。

そんな岡本さん、ご自分でアクション講座も開いておられるようなので、興味のある方は是非その門を叩いてみてください!!(ブログ


それはそうと、岡本さんはこのアクター塾ブログをよく読まれているとのこと・・・

結構、業界の方達が読んでくださってるんですねえ~。ありがたいことです。噂では、某CG製作会社の社長さんまでが熱心な読者だそうで・・・

うひょ~~!プッレシャー感じるなあ!!
毎回、ギャグのネタ考えるの大変なんですよねぇ~~(笑)

2011年5月14日土曜日

殺陣のスタイル(素材集)

今回から新しい企画『モーション素材集』を始めたいと思います。

現在進行しています『アクション講座』では、今後『パンチやキック・刀の振り方等、基本的な技』の解説に努めていこうと思っていますが、アニメーターの方達にとっては(それも必要ではあるけれど)もっと応用的な、例えば<連続技の脚運び>や<見栄えのする派手な技>の資料も欲しいところではあると思います。

なので、『応用的な技をザックリの説明でお届けする』というコンセプトの基、アクション講座と並行する形でこのモーション素材集を連載していきたいと思っています。

資料となる動画は、以前私が主宰しておりました玄舟塾(げんしゅうじゅく)という殺陣の教室で撮影されたものを使うつもりですが、「前に撮ったものを使えるから、こりゃ随分手抜きができるわい。うっしっし!」なんてことは 全然思ってませんので!、念のため。

それでは、適当にいってみましょう(やっぱり)!!


最初にご紹介するのは
一撃一撃に気迫を籠めるタイプの殺陣です。

私は『ぶった斬り系』とか呼んでいますけど(笑)、殺陣にリアルさを求める人達はこのスタイルを好んで使っているようです。(この動画の『手(て:殺陣の業界用語で振り付けのこと)』はあくまでモデルであって、実際にはもっと複雑な手になります)



次にご紹介するのが
舞いのような太刀さばきが特徴の殺陣です。

『暴れん坊○○』がこういった殺陣の代表格かと思われます(笑) 最近の演劇では、殺陣といえばもっぱらこの『舞い系』の殺陣が演じられているようです(もちろん例外はありますけど)



このように、一口に殺陣と申しましても様々なスタイルがあるものです。また、今回ご紹介した二つのスタイルが全てというわけではなく、この二つを両極とした(アナログ的に)数え切れないほどのスタイルが存在しています。

ですが、この二つのスタイルを頭に入れながら殺陣を見るならば、「ああ、この人達はぶった斬り系と舞い系の中間・・・いいとこ取りを狙ってるな」とか(笑)、ちょっと踏み込んだ楽しみ方が出来るようになります。

皆さんが殺陣を観賞される際の参考にしていただければ幸いです。

2011年5月11日水曜日

塾長無双技_槍

すいません。
ネタが思いつかなかったので、今日はこれで勘弁してください。

3 分で適当に考えました(笑)



前半は適当ですが、後半の『突いたり引いたりする』件は中国武術における槍の基本動作です。

しまった!最後に基本ポーズに戻るの忘れちゃった!!