2011年4月28日木曜日

アクション講座_骨盤体操_1

今回は腰についてお話しましょう。

ご存知の通り、腰は姿勢の要・運動の要です。腰の位置や角度が悪ければ、運動の効率が悪くなるばかりか健康にも害が出てきてしまいます。

このアクション講座では、今後アクションの基本的な技をどんどんご紹介してまいりますので、そこで怪我や故障をされないためにも、ここでしっかりと腰についての理解を深めておいてください。

先ず最初にお断りしておきたいのですが、私が『腰』という言い方をする場合にはほとんど『骨盤』を指すと思っていてください。現代の人達は『腰』というと『腰椎』の方を連想されると思いますが、何か運動(特に東洋的な)をやっている人の場合は間違いなく『骨盤』を連想するものなのです。


つまり、骨盤というものは運動においてそれほど重要な位置を占めているということです。骨盤を正しく使えなければ、下半身で生み出した力を上半身に繋げることができません。またそれだけではなく、骨盤そのものからも力を発揮することができなくなってしまいます。

これは意外に知られていないことですが、骨盤の中には太くて長い筋肉が何本も走っていて上半身と下半身を繋ぐ役目を果たしています。前回の『軸の話』でもご紹介した『インナーマッスル(深層筋肉)』がそれですが、それらは単に姿勢維持のためだけではなく、骨盤から強力な運動を生み出す働きも担っているのです。武道家やダンサー達は、このインナーマッスルを駆使して、威力のある突き蹴りや優雅な舞いを演じているのです。

骨盤のインナーマッスルが重要なことは運動をする人間に限ったことではありません。それが柔軟であるということは、一般の方々が健康に日常生活を送る上でとても大切なことなのです。

デスクワークがほとんどの皆さんの中には腰痛(腰椎の痛み)に悩まされている方も多いと思いますが、それは外傷的なことを除けば、ほとんどの場合骨盤のインナーマッスルが硬化している(硬くなっている)ことに原因があります。

そもそも上半身はとても重いものです。あの細い腰椎だけで支えるのは至難の技といえましょう。もちろん、整形外科にいけば必ず「腹筋や背筋を鍛えましょう」的なことを言われるわけですが、それは地震対策のためにビルの外壁だけを強化するのに似ています。そこでは、肝心の『土台』に関する考え方が抜け落ちています。

『土台』すなわち『骨盤』です。

先ほども申しましたように、骨盤の中の深層筋はとても強靭なものです(主なものに大腰筋や腸骨筋等が挙げられます)。本来は、位置的にも土台に当たるそれらの深層筋群で上体を支えるべきものなのです。また、それらの深層筋が柔らかく弾力を持っていれば、歩行や走りで日常的にこうむる衝撃も吸収してもらえます。丁度、大きなビルに設置されている免震システムに例えられるでしょう。


さてさて、能書きはこれくらいにしておいて、骨盤のインナーマッスルを柔らかくする体操をご紹介していきましょう。

先ず最初は『側屈(そっくつ)』です。
そう、上体を左右のどちらかに倒すあれです。

皆さんも小学校や中学校の体育の時間にやられた経験がおありだと思いますが、今回ご紹介する側屈はそれとはちょっとだけ重心が異なります。私は『深い側屈』と名付けましたが、一般的なものよりも屈曲が深いという意味で、それだけ腰(骨盤)へのストレッチ効果が高くなるものです。

それではやり方です。

一般的な側屈は腰の位置がほぼ真ん中のままだと思いますが(写真)



『深い側屈』は腰の位置を、身体を倒す方向とは反対側に移動させます(写真)



これによって、骨盤の側面がストレッチされるばかりではなく、最初は感じることが難しいかもしれませんが、骨盤のインナーマッスルもストレッチされるのです。


さあ、『深い側屈』である程度腰(骨盤)が解れたら、メインディッシュの『腰回し』に入りましょう!!

やり方は簡単です、骨盤を丁寧にゆっくりと回すだけです。ただし楽をなさらず(笑)、ご自分の柔軟性の幅を広げるつもりでなるべく大きく動かすことを心がけましょう(腰に異常を感じる方はこの限りではありません。十分注意をしながら少しずつ動きを大きくしていってください)



いかがでしたでしょうか?なんだか腰全体(腰椎も含む)が楽になった感じがしませんか?

これだけシンプルな運動なのに効果は抜群です。長く続けていれば姿勢や動きも改善されてくることでしょう。できれば、一日に、朝昼晩の三回は行うようにしてください。回数は、ご自分が気持ちの良い回数で構いませんが、できればワンセットに10回程度は回すよう心がけてください。

そうやって骨盤の可動域が広がってくると、他者の運動を見る目も変わってくるはずです。「この人の今の動きは、骨盤をこのように動かした結果なのだな・・」という見方ができるようになってきます。そうすると、CGキャラに対した時も全く同じ視点でモーションを捉えることができるのです。

(皆さんも既にお気付きのように)アニメーターというものは、自分自身の身体の在り方を通して運動(アニメーション、モーション)を理解するものです。ですから、日頃から自分の身体と向かい合い、身体を磨き続けることこそがアニメーションのスキルアップに繋がるのではないのかと思うのです。

皆さんの腰が柔らかく健康になり、そうして素晴らしいアニメーションを次々に世に送り出してくださることを心から願って止みません。

それでは、ご健闘をお祈りいたします!!

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